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地域だより

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最終更新日:2015年5月26日

第39回沖縄県さとうきび競作会表彰式および「さとうきびの日」関連行事記念講演の開催

2015年5月

那覇事務所 青木 敬太

はじめに

 沖縄県では、生産技術および経営改善の面で創意工夫し、高単収・高品質な生産を上げたさとうきび農家を表彰し、農家の生産意欲を喚起して沖縄県の糖業の発展につなげることを目的として、毎年、さとうきび競作会(公益社団法人沖縄県糖業振興協会主催)を行っており、この表彰式が平成27年4月24日、那覇市内で開催された。

 表彰式に先立ち、「さとうきびの日」(毎年4月の第4日曜日)の関連行事として、沖縄県農業研究センターの比屋根真一作物班主任研究員、同センター宮古島支所の新垣則雄前支所長による記念講演が行われた。

1 記念講演

 比屋根氏は、「さとうきび畑における雑草防除」と題して講演を行った。各地域のさとうきび畑における雑草防除の実態を把握するため、沖縄県のさとうきび栽培技術の指導者やさとうきび生産者を対象としてアンケート調査を行い、その結果を報告し、雑草の発生・繁茂状況などについて、今後のさらなる現地調査の必要性を訴えた。

 一方、新垣氏は、「さとうきび害虫の生態と防除技術開発」と題して講演を行った。さとうきびの株出し不萌芽の要因であるさとうきび害虫(ハリガネムシ)は、ベイト剤などの使用により防除効果が表れ、近年急激に株出面積が増大している地区も出てきた。本講演では、さらなる株出しの増産のためには、しっかりと雑草防除を行うことが重要であることを改めて強調するとともに、これらの土壌害虫防除技術の現状について紹介された。
 

2 競作会表彰式

(1)表彰者の選考方法
  競作会では、優良事例調査委員会により、農家の部と多量生産の部の二部門において、優れた成績を上げた農家と生産法人が選考される。また、特別表彰の部として長年にわたるさとうきび生産と地域の指導者として尽力されてきた農家が選考される。

 農家の部では、本島北部・中部・南部、宮古、八重山の5地区において、予備審査の成績が優れた農家について全刈審査を行い、その結果、順位が決定される。

 多量生産の部では、生産量、品質、工場搬入シェアの面から地域糖業への貢献度が大きいとして、各製糖工場から推薦された農家と生産法人について、審査の結果、一般農家の部、生産法人の部における順位が決定される。

 当機構は、多量生産の部の一般農家の部一位とさとうきび生産法人の部一位に対し、「独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞」として賞状の授与を行っている。

(2)受賞者の紹介
  以下、代表的な受賞者を紹介する。

≪農家の部≫
 ア 栽培品種
 イ 作型
 ウ 収量
 エ 甘しゃ糖度
 オ 甘蔗糖重量×係数(注)
 カ 経営状況および栽培の工夫

(注)係数は、「さとうきび及び甘しゃ糖生産実績」(沖縄県農林水産部)による作型ごとの平均単収を基に夏植えを1として算出したもの。(係数:夏植えを1とし、春植えは1.647、株出しは1.532)

○沖縄県第一位(農林水産大臣賞)
  石垣 吉三氏(八重山地区代表 石垣市)


 ア 農林27号
 イ 春植え
 ウ 10,180kg/10a
 エ 15.9度
 オ 2,666kg/10a
 カ 石垣氏のほ場はかんがい施設が整備されており、積極的にかん水されたことで春植えとして素晴らしい収量となっている。土壌養分の状況もおおむね良好で、農林27号を用いた畝幅が139センチメートルの春植えで、原料茎長が3.19メートルと長く倒伏していたものの、大きな台風の被害もなく、枯死茎が見られなかった。かん水の実施により干ばつの影響も少なく、1本重平均約1.7キログラムと農林27号の特徴を活かした重い茎で原料茎重が10アール当たり10.2トン、甘蔗糖度15.9度の高単収・高品質を実現した。
 
○沖縄県第二位(農林水産省生産局長賞)
   大城 儀盛氏(中部地区代表 北中城村)


 ア 農林25号
 イ 春植え
 ウ 8,280kg/10a
 エ 16.4度
 オ 2,237kg/10a
 カ 農林25号の春植えで、ヤソ害や枯死茎などの影響で収穫茎数が10アール当たり6770本とやや少なめであったものの、原料茎長が2.56メートル、原料茎重が10アール当たり8.2トン、甘蔗糖度が16.4度と高単収・高品質を実現した。
 
○沖縄県第三位(沖縄県知事賞)
   安里 エルビ氏(南部地区代表 糸満市)


 ア 農林21号
 イ 夏植え
 ウ 13,200kg/10a
 エ 13.9度
 オ 1,835kg/10a
 カ 農林21号の夏植えで、枯死茎やヤソ害などがあったものの、原料茎重が10アール当たり13.2トン、甘蔗糖度が16.2度と優秀な成績となった。
 
≪多量生産の部≫

 ア さとうきび生産量  
 イ 甘しゃ糖度
 ウ 経営状況および栽培の工夫             

○一般農家の部 沖縄県第一位(独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞)
   當間 勝氏(石垣市)


 ア 688,405kg
 イ 14.10度
 ウ 當間氏は自作地と借地合わせて約7.7ヘクタールのほ場で夏植え・株出し栽培を行っており、夏植えの採苗ほも設置するなど優良苗の植え付けによる夏植えの発芽安定を心掛けている。雑草管理に関しては、「雑草は予防・初期防除により省力化・農薬費の節減につながる」として土壌処理剤を積極的に利用している。優良苗の植え付けや雑草、害虫の初期防除を徹底され、高単収を維持している。
 また、株出し栽培においては前作収穫後の畝間にハーフソイラを用いて心土破砕を行い、根域拡大による生育促進、干ばつ被害の軽減にも努めている。
 
○さとうきび生産法人の部 沖縄県第一位(独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞)
   農業生産法人(有)ドリームファーム(久米島町)


 ア 712,331kg
 イ 13.77度
 ウ 代表者の宇江城昌也氏は父、弟の3人で自作地・借地合わせて約6万坪の経営面積で機械化一貫体系による省力化栽培を実践している。栽培に関しては、「初期管理の徹底は、その後の防除の省力化・農薬代の削減につながっている」との思いから、植え付け時や株出し管理時の殺虫剤(粒剤)や除草剤(土壌処理剤)を欠かさない。また、ハーベスタによる収穫作業についても、製糖工場の搬入状況を意識しながら約5万坪を受託している。
 
 これらの方々の他にも、地域でのさとうきび栽培が優良と認められた奨励農家、特別表彰の部の農家が表彰された。
(3)表彰式の様子
 表彰式では、受賞者に賞状および副賞の授与が行われた。当機構薄井総括理事から「独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞」の受賞者にウージ染め(さとうきび染め)の賞状が手渡された。

 受賞者を代表したあいさつとして、農林水産大臣賞を受賞した石垣氏は「昨年は干ばつのため降水量が少なかったが、スプリンクラーによる散水を行ったことが良かった。また、病害虫防除を徹底することも大切である。今後も体の続く限りさとうきび作りに励んでいきたい」と力強く語った。
 
 
 

おわりに

 表彰式では、受賞者のみならず、地域の関係者が喜びを分かち合っている姿が印象的だった。また、受賞者からは、「来年は今年よりもさらに良い成績を残す」といった、強い意気込みが聞こえてきた。現状に満足することなく、向上心を持ってさとうきび生産に取り組む姿勢は、今後も地域と沖縄県のさとうきび生産に好影響を及ぼすことに違いない。

 今後も、このさとうきび競作会が多くのさとうきび生産者の目標となり、生産者とともに地域の関係者が連携して、他の地域と切磋琢磨し合いながら、沖縄県のさとうきび生産が拡大していくことを期待したい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713